ある夢想家のブログから

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30分点検読書 二冊目:赤川学『性への自由/性からの自由』(青弓社、1996年)

※30分点検読書とは→モーティマー『本を読む本』に書いてある点検読書その1「組織的な拾い読み、または下読み」を30分でやる練習。

 

赤川学『性への自由/性からの自由』(青弓社、1996年)

1.どんな種類の本か

 ジェンダーセクシュアリティを専門とする社会学者の赤川学が、ポルノグラフィを歴史社会学的に分析しようとした本。修士論文を大幅に加筆したものなので、分量としては200頁ほどだが研究書に分類されるだろう。

 

2.全体として何を言おうとしているのか

 ポルノグラフィが個人を性的主体として確立するための装置として機能していること、またそうした装置としてポルノグラフィが登場するためにはそれに対応する歴史的社会的条件が生成してこなければならなかったということ。

 

3.そのために著者はどのような構成で概念や知識を展開しているか

 著者が自分のことを愚直なフーコー主義者であると言っている箇所があるが、主としてフーコーの言説分析に依拠して論が展開される。取り上げられるポルノグラフィとしては18世紀の『ファニー・ヒル』から現代日本のエロ雑誌まで多様であり、ざっと眺めるだけでもなかなか楽しい。研究書らしく先行研究を踏襲してセクシュアリティやポルノグラフィといった基本概念を検討する箇所がある。

 

本の感想

 昨今いろいろ話題になっているからそれに触発して本棚の肥やしになっていた本を再び手に取った。Amazonで見るとちょうど1年前に注文したようだ。何故これを買おうと思ったのか、今から考えればよく分からないほどのちゃんとした専門書。ジェンダーやポルノグラフィやフェミニズムの基礎知識なしではついていけないし、エロ本をこんな真面目に分析してるよワロタで終わってしまう恐れがある。ツイッターでの表現の自由戦士フェミニストの泥沼の争いの根っこはこうやって研究の歴史の蓄積によって作り上げられていったんだなと思えた。またこの領域にも立ち返る必要が出てくるだろう。

 

30分点検読書の感想

 30分をどういうふうに使ったかというと、最初の5分はまえがき・あとがき・目次を見て、それから20分くらいで最初の100頁くらいを飛ばし読みしていって、残りの5分で慌てて残り半分の100頁を一通りめくるという感じ。最初の5分の使い方はたぶん間違ってないと思うけど、そこからはもうちょっと万遍なく必要な箇所を見極めてバランスよく読んでいくべきかなと思っている。骨組みとその中の作者の主張(つまり核心)を抽出するのが点検読書の目的だからな。ディティールは必ずそれを言う必要性が骨組のなかで見出されるからこそ登場する。そこらへんをなる早で見抜けるよう訓練していこう。

 今回読んだ本は研究書だったからなあ。前提知識ゼロというわけではない(専門家が100だとしたら僕も1か2くらいは前提知識がある)。ただ、研究書は自分の専門分野じゃないと点検読書で得られるものがあんまりないかも。明日はまったく違ったジャンルの本を読みます。とにかくいろんな本に触れることを今は一番大事にしよう。短時間でそれをやれるのが点検読書の利点だしね。